2023年4月 オンライン資格確認が義務化

経営

オンライン資格確認とは、2021年10月に本格運用がスタートした仕組みです。患者さんが加入している医療保険を確認する資格確認を、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等によりオンラインで資格情報の確認する仕組みです。

※ 資格確認
病院・クリニックなどの医療機関や薬局で、患者が加入している医療保険を確認する作業

従来の資格確認の方法は、患者の健康保険証を受け取り、記号・番号・⽒名・⽣年⽉⽇・住所などを医療機関システムに入力する、というものでした。オンライン資格確認を導入することにより、こういった業務が簡素化でき、ミスの軽減・患者様の待ち時間のへつながります。

2022年6月7日に「経済財政運営と改革の基本方針 2022」が閣議決定され、2023年4月1日から医療機関や薬局などでの「オンライン資格確認」が原則義務化されました。

オンライン資格導入メリット

受付業務の手間削減

マイナンバーカードによる受付の場合は、顔認証付きカードリーダーを用いて最新の保険資格を自動的に取り込めるようになります。 保険証の場合は、最低限の⼊⼒が必要ですが、同じように資格情報を取り込むことができ入力の手間が減らせます。

さらに、一括照会により予約がある患者の保険資格の有効性や資格情報の変更等が、事前に確認できる点も大きなメリットです。

患者の医療情報の入手による正確な医療の提供

通常時は、薬剤情報・特定健診情報を閲覧するには、本人がマイナンバーカードによる本人確認をした上で同意した場合に限られますが、オンライン資格確認が導入されていれば災害時は特別措置として本人確認ができなくても閲覧ができます。どんな場所でもデータに基づき迅速な医療の提供が可能となります。

レセプト返戻作業の削減

保険医療機関に提出したレセプト内容に不備や誤りがあった場合に差し戻されることをレセプト返戻と言います。オンライン資格確認を導入すると、患者の保険資格がその場で確認できるようになります。そのため資格過誤によるレセプト返戻が減り、窓口業務の負担が減ります。

導入後は一括照会が可能になり、患者が来院する前に予約している患者の保険資格が有効か、保険情報が変わっていないかを把握できるようになります。よって、必要な情報が取得できずに再申請できないといった事態に発展することもなくなり、診療報酬の未収金の削減につながります。

データに基づいた診療

オンライン資格確認の導入により、3年間分の薬剤情報と5年間分の特定健診等情報の閲覧が可能となります。薬剤情報や特定健診等情報が閲覧できることで、かかりつけ以外の医療機関でも患者の最新情報が確認でき、いつでもどこでも適切かつ迅速な診療・治療が実現します。

※ 特定健診等情報
令和2年度分から順次登録された5年間分の情報の閲覧が可能
患者様によってのメリット

・閲覧に同意があった場合のみ、他の医療機関の診療情報も取得できるため、初めての医療機関でも問診の手間を軽減できる

・従来まで必要だった「限度額認定」の取得や過払い金の払い戻し請求が減る

・診療情報や処方箋に関する情報を医療機関や薬局で確認できるようになるため、自分の状態を客観的に見ることができる

・マイナンバーカードをICリーダーで読み取るだけでスムーズに受付業務が完了するため、診察券が不要となり、様々な診察券を所持する必要がなくなる

オンライン資格導入デメリット

導入費・運用費

オンライン資格確認の導入時には電子カルテやレセプトコンピューターの改修、顔認証付きカードリーダーやパソコンの購入、回線整備などさまざまな費用がかかります。初期費用については政府からの補助金を活用できますが、2021年3月末までに申請を行った場合を除き、薬局にも一部負担金が求められます。

加えて、運用にあたり発生する端末故障の修理費や、回線の月額料金などのさまざまな運用費用が発生します。

サポート負担

医療機関を利用する患者さまには高齢者も多く、慣れない電子機器の操作やマイナンバーカードの仕組みにサポートを必要とことも多いでしょう。規模の小さい医療機関は、問い合わせのサポート対応に追われて結果的に業務負担が増加する事態になる恐れもあります。

セキュリティ面のリスク

オンラインで個人情報が取得できるということは、流出するリスクも持ち合わせているということです。そのため、ウイルス対策を徹底するなど徹底したセキュリティ管理が必要となります。
また、患者さまが院内でマイナンバーカードを紛失したり、盗難に遭うなどのトラブルにも対応できるよう、院内で体制を整えておくことが必要です。

さいごに

2023年1月現在、マイナンバーカードの申込数は累計8,350万件であるが、保険証利用登録件数は4,070万件に留まります。

また、オンライン資格は2021年10月に本格稼働したとは言え、2023年2月現在での導入率は37.7%と、決して高いとは言えない状況です。

この普及率の悪さの原因のは、患者さまがマイナンバーを保険証として利用するメリットを感じなかったり、医療機関が初期費用を捻出できなかったりとさまざまな要因が考えられます。医療現場の業務効率化、そしてより良い医療提供のためにも早めにオンライン資格確認を検討してみてはいかがでしょうか。

出典:マイナンバー交付状況について / 総務省
出典:マイナンバーカードの健康保険証利用について / 厚生労働省