コロナ後のクリニックを取り巻く環境について

経営

クリニック経営に関わらず、変化していく時代において、生き残るのは「強いもの」ではなく、「環境に適応したもの」です。
「環境に適したもの」のみが生き残ったいわゆる「適者生存」の環境の中でも、クリニックは今までと同じ手法では生き残りが難しい環境にあります。

コロナ禍の受診控えがクリニック経営を圧迫

新型コロナウイルス拡大により多くの患者様が受診控えを考えるようになりました。医療機関で新型コロナウイルスに感染することを恐れ、緊急の体調不良や持病のための通院以外は「なるべく通院を控えたい」と考えるようになったためでしょう。

慢性疾患や定期受診の患者様でも、「なるべく病院に行きたくない」という要望から長期処方を希望する傾向もみられます。2020年5月に日本医師会が全国のクリニック対象に行ったアンケートによると前年同期より長期処方の患者様が増えたクリニックは70%にのぼります。

(出典:公益社団法人 新型コロナウイルス感染症対応下での医業経営の状況

患者減少時代にコロナ後のクリニック経営はどうなるべきか

患者数
外来患者数での新規患者数と再来患者数の合計でカウント

新規患者数は、その後再来患者数としてストックされていきます。しかし一定数は、別のクリニックに移る、転居する、病気が治り再診が不要になるなどの理由で再来患者数にカウントされません。

厚生労働生の病院報告によると、病院の1日平均外来患者数は1,243,000 人で、前年に比べ4.2%増加しています。しかし、その中で新規患者数はコロナ渦でさらに大きく増えることもなく、今後もこの傾向はしばらく続くと考えられます。

では再来患者を増やすにはどうしたらよいのでしょうか?

マーケティング定説では、「新規顧客」の獲得コストは、「顧客リピート」させるコストは10分の1で済むと言われています。つまり、広告やホームページの見直しでコストをかけるよりも、転院を防ぐことや未受診を減らすことに工夫をすることで、再来患者様を増やすことは可能だと言えます。

では再来患者数が増えない原因と改善策を探っていきましょう。

転院

転院の原因となる主な理由には「不満」「不安」が考えられます。

まずは患者様が抱える「不満」について、原因と改善策を考えていきましょう。

原因 待ち時間の長さ 医師・看護師等スタッフの対応
改善策 使いやすい予約システム、WEB問診、オンライン診療などICTツールの活用 クリニックのスタッフ向けの接遇マナー研修

待ち時間の長さは忙しい人にとってはより病院離れを加速させる大きな原因となっています。アレルギーの薬の処方等いつもと変わらない薬であれば、オンラインで済むとありがたいですね。

次に「不安」について考えてみます。

原因 医師、クリニックとのコミュニケ―ション 待合室の混雑・予約の取りやすさ
改善策 ・医師やクリニックからの患者に向けてのコミュニケーション頻度を上げる。(例)定期的にクリニックからメッセージを送る。
・診療時間やワクチン接種、新しい医療機器の導入など情報提供を行う
・コロナ禍での感染対策、待合室での蜜回避
・高齢者にもわかりやすい予約システム

予約をしていても、診察日が先だとついうっかり忘れてしまうという事がよくある事です。前日のお知らせメール等のリマインダーがあるとありがたいですね。

また、便利な予約システムでも、ネットに不慣れな高齢者には分かりにくいものです。シンプルな機能のみのシステムやラインから予約できるシステムなど、様々なものがありますので、院内で検討してみてください。

未受診

一度受診した患者様が、継続治療が必要にも関わらず、自身の判断で「治癒した」「できるだけ受診を控えたい」という心理で次回予約に来なくなるのが未受診です。

継続治療が必要な患者様が来なくなるということは、重症化につながる可能性もあり、大変危険です。医師からなぜもう一度受信が必要か直接伝える他に、次の受診目安を紙に印刷して渡す、予め次の予約を取っておくなど、患者様に合わせた対応策が必要とされます。

転院や未受診を防ぐことで患者様のリピート率を上げ、患者数を増やすことに期待できます。
コロナ後も安定したクリニック経営を目指すのであれば、新規の患者様を増やした後のアフターフォローが重要なカギとなります。

さいごに

新型コロナウイルス感染症の影響により、医療界の将来予想は不透明で予測不可能であるとより実感させられることとなり、適者生存に向けて、感染対策や経営改善、ICT活用などのニューノーマル戦略を立てる必要があります。

より社会や患者様のニーズに的確に早く寄り添えるか、ICTだけにとどまらず、人の感性にも訴える安心安全な医療が求められていると言えるのではないでしょうか。

最新の設備や現時点でのスタッフの能力だけに頼らず、今後も進化し続けていける時代の患者様に寄り添うクリニックの内装、設備を提案させていただきます。