2020年初頭に始まった新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)は流行が長引き、医療現場に大きな影響が出ています。マスクの着用が3月13日から個人の判断に委ねられたとは言え、しばらくはウィズコロナの状態が続くでしょう。
そんな新型コロナの感染拡大は、我々の生活はもちろん、クリニック経営に大きな変化をもたらしました。
ウィズコロナにおける受療方法の変化
医療機関での度重なるクラスター発生の報道などから、できるだけ受診を控える動き(受信控え)が度々起こるようになりました。
この受診控えにより医療機関への受診頻度をが減少した為、長期処方や電話診療、オンライン診療、在宅医療が普及するなど、患者様が状況に応じて、受診方法を自由に選べる時代になってきました。
フランスやアメリカ、イギリスなどの多くの主要国でのオンライン診療普及率は、新型コロナウイルス感染症流行前で約20%でしたが、規制緩和後では、フランスは約50%でアメリカが約60%、イギリスが70%まで普及率がアップし、遠隔医療が普及しています。
しかし、日本のオンライン診療シェア率は主要国と比べて低い傾向です。
健康保険組合連合会の「新型コロナウイルス感染症拡大期における受診意識調査」によると、若年層を中心にオンライン診療への関心、利用意欲が高まっており、年齢層が高くなるにつれて回答割合に減少傾向がみられました。オンライン診療は人との接触がなく、接触機会の減少に繋がるため、患者心理として、感染症への不安軽減にも効果があり便利に思われますが、ご高齢の患者さんにはハードルが高いのかもしれません。
オンラインシェア率が低い要因
機器の取り扱いに不慣れ
オンライン診療はスマホやPCを使うことが前提です。アプリ上で「保険証の確認」や「決済」が行えて便利な反面、そもそもIT機器に馴染みのない方ですと使うことが難しいのです。高齢者など機器の扱いに不慣れな人には受診が難しいのでしょう。
診療報酬の低さ
オンライン診療は対面診察よりも診療報酬が低く、導入する病院に経済的な負担がかかります。システム導入や維持運用のための費用および労力がかかります。
一方で患者さんの診察料は減りますが、オンライン利用料が別途かかります。
シェア率向上に向けて令和4年に診療報酬が改定
オンライン診療シェア率向上に向けて令和4年に診療報酬が改定されました。
(🔗参考:令和4年度診療報酬改定のポイント / 令和4年度診療報酬改定の概要個別改定事項Ⅱ)
初診
- 初診料(情報通信機器を用いる場合):251点(対面の場合は87%)
- 再診料(情報通信機器を⽤いた場合):73点
- 施設基準の届出を求めるが「オンライン診療の算定数を1割以下」「医療機関と患家との距離が概ね30分以内」は適用しない
再診
- 再診料(情報通信機器を用いた場合): 73点
- 外来診療料(情報通信機器を用いた場合) :73点
- 施設基準の届出を求めるが「オンライン診療の算定数を1割以下」「医療機関と患家との距離が概ね30分以内」は撤廃
医学管理料
- 点数は全て対面の87%
- 検査処置等を伴わない医学管理料を算定可能として追加し、現行の9種類から20種類へ増加
在宅医療
- 月1回の在宅診療と月1回のオンライン診療」「2月に1回の在宅診療と2月に1回のオンライン診療」の場合の点数を新設
- 施設入居時等医療総合管理料においても、同様の類型を新設
さいごに
患者様の高齢化が進んでいる一方、働き手の減少による医療従事者の減少が見込まれてい
る中で、オンライン診療システムの導入やWEB問診システムの活用等効率化に向けた改革が求められています。
活用に向けた整備が進められ、採用する医療機関や活用する若い世代患者様も増えてきた一方で、現在の高齢者層は対面による診療を求めている人が多く、かかりつけ医の必要性も高まってきています。
ウィズコロナにおけるクリニックの経営は、時代に合わせた工夫と患者様満足度向上が今後の経営ポイントといえます。